AMDが発表した最新の決算報告、なかなか興味深い内容です。AI向けのInstinct GPUが売上を大きく押し上げ、データセンター事業も絶好調!「これからのAI市場はAMDのものだ!」と言わんばかりの強気な姿勢です。
しかし、世の中そう甘くはありません。競争相手は手をこまねいておらず、新しい技術が「GPUいらず」の未来を見せつける場面も。さらには市場予想を下回った部分もあり、株価はガクンと下がる展開に…。
AMDの未来は明るいのか、それとも不安要素が大きいのか?最新の決算をもとに、今後の展望を探ってみましょう!
AI時代のAMD、どこまで伸びる? 〜Instinct GPUの未来〜
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AMDのAI向けGPU「Instinct」が絶好調です。2024年の年間売上は50億ドルを超え、データセンター事業の成長をけん引しました。これを受けて、CEOのリサ・スー氏も「これからもっと売れる!」と期待を寄せています。
特に次世代モデル「MI355X」が市場の注目を集めています。NVIDIAの最新GPU「B200」に匹敵する性能を持ち、メモリ容量も50%増しの288GBと、かなりのパワーアップが期待されます。そのため、本来は2025年後半の発売予定だったのが、前倒しで夏ごろから本格生産されることになりました。
さらに、その次の世代となる「MI400シリーズ」もすでに計画中です。これは「ラックスケールアーキテクチャ」という新しい設計を採用し、CPU・GPU・ネットワークを一体化してデータセンター向けに最適化されるとのこと。要するに、AMDは今後もAI市場でしっかりと存在感を示していくつもりのようです。
この流れを見ると、「AMD、もう安泰じゃん!」と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。AI業界のトレンドはめまぐるしく変わり、必ずしもGPUが主役であり続けるとは限らないのです。次の見出しでは、AMDに迫る新たな脅威について見ていきましょう。
競争激化!新技術がAMDに与える影響は?
AI向けの計算処理は、何もGPUだけのものではありません。最近は「AI専用チップ(ASIC)」がどんどん開発され、GoogleやAmazonといった大手クラウド企業は、自社で独自のチップを作り始めています。この動き、AMDにとってはちょっと嫌な話です。
たとえば、Amazonの「Trainium2」は、すでに10万個以上が導入され、大規模なAIモデルの訓練に使われています。Broadcomも「何百万ものAIチップを売るぞ!」と息巻いています。こうなると、「GPUじゃなくて、専用チップのほうがいいんじゃない?」という流れが加速するかもしれません。
さらに、中国発の大規模AIモデル「DeepSeek」が示した新しい可能性も見逃せません。なんと、従来のAIモデルより少ないGPUで驚くほどのパフォーマンスを発揮したのです。もしこの手法が広まれば、AIの計算処理に今ほどのGPUパワーは必要なくなるかもしれません。
とはいえ、AMDのリサ・スー氏は「いろんな種類の計算チップが必要になるから、GPUの役割も変わらずある」と楽観的な姿勢です。確かに、AI市場全体の成長は続くので、GPUの需要がゼロになることはないでしょう。でも、「AI=GPU」だった時代は、そろそろ終わりを迎えるのかもしれません。
売上好調でも安心できない?投資家が警戒するポイント
AI向けGPUの売上は好調ですが、AMDの決算報告を細かく見ると、ちょっと気になるポイントもあります。特に、ゲーム事業と組み込みチップ事業の低迷が目立ちました。
まず、ゲーム事業の売上は前年同期比で59%もダウン。これは、PS5やXboxの発売からすでに5年が経過し、そろそろ次世代機の噂も出始めているからでしょう。新しいハードが出ない限り、AMDのゲーム向けチップはなかなか売れません。
また、組み込みチップ事業も13%減少しました。航空宇宙や防衛向けの需要はあるものの、産業用や通信向けの需要は低迷中とのこと。要するに、AI向けGPUが好調でも、それ以外の事業が足を引っ張っている状態です。
さらに、データセンター事業が市場予想を下回ったことで、AMDの株価は決算発表後に9%も下落しました。これには投資家も「おいおい、大丈夫か?」と心配になったはず。AMDは「2025年後半にはもっと伸びる」と強気の姿勢ですが、市場の期待を超える成長ができるかどうか、今後の動向が注目されます。
Source:The Register